良質な睡眠をとるための薬を投与されてから、
母はいつもの調子に戻ったようだ。


笑顔が増え、ゆっくり話してくれるようになった。
でも・・・手首に巻かれた「それ」は、
母の手の動きの自由を奪っていた。


せん妄症の症状が出て、自分で呼吸器を外した事故があってからは
両手首に「抑制」を巻かれるようになったのである。
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つまり、重しをつけて動きを制限させ、
危険な事故を防ぐための手段だった。


家族が面会中の時は、ナースコールを鳴らし、外してもらえる。
しかし、面会が終わるとまたナースコールで呼び出し、
「抑制」を手首に巻かれるのだ。


優先して診てもらえる病室に居るとは言え・・・・
看護師さんの勤務人数が少ないこともあり、
ましてや夜勤になると更に人数が減るので
呼び出しをしても待たされることが多いのだという。


この状況の中、命の綱とも言える呼吸器を自ら外す行為は、
看護師さんの負担をさらに増やすことになる。


・・・抑制を付けることは、しょうがないこと。
抑制が嫌ならば、家族が寝泊まりすれば問題は解決する。


自営業なので、ある程度時間の自由はきくものの・・・
仕事を頼める代わりの人間が居ない。


そして夜、寝泊まりできるほどの体力も精神的余裕もない・・・


私は、父に提案した。
面会時間は7時までだけど、なるべく消灯の9時まで居るようにして、
休みの日は交代で母のそばに居てあげよう、と。
そうすれば、夜寝るときだけ抑制が巻かれてしまうけど
たとえ数時間でも抑制無しで居られるから、母の負担の事を想えばこそ・・・
とにかく、何とかしてあげたかった。
体は回復してきても、抑制を巻かれることで
さらにストレス負荷を与えているような気がしてならないからだ。


父と弟、私の3人で、せん妄症が改善されるまで。。。
しばらく、交代で面会時間を長く調整するようにした。





母は、手首を自分の衣服へこすりつけるようになった。
巻かれた部分が痒いのだという。
代わりに掻いてあげると、気持ちよさそうに顔がほころんだ(*'ω'*)


抑制を巻かれる理由については、本人も理解はしているようだった。
でも、なんとなく諦めたような、辛そうな表情。
いたたまれず、看護師さんへ聞いてみることにした。


私『せん妄症の症状はその後、どうでしょうか?』
看護師『以前に比べたら、だいぶマシだと思います^^』
私『そうですか。なら、良かったです。・・・あの、抑制なんですけど・・・』
看護師『ああ、本人も辛そうですよね。事故を防ぐためとはいえ、私も正直辛くて・・・』
私『症状が落ち着いてきているのなら、離脱するのは難しいですか??』
看護師『うんうん、そうですね!主治医に確認して、なるべく早く離脱できるよう相談しますね^^』
私『お願いします!ストレス負荷も気になりますので(;´Д`)』


抑制を巻かれてから数日経過した。
抑制中は、主治医が問診する前に必ず、
本人の名前と年齢、今いる場所、入院している目的、今の時間を聞いていた。


ほどなくして、抑制は無事に離脱することが出来た(∩´∀`)∩!



page16へつづく。