病室にもどると、弟が母に語り掛けていた。
母は、うつろな表情で一点をみつめ、何も反応が無い。
私『ごめん、お待たせ。』
弟『・・・おかーさん・・・僕の事、覚えてないみたい。』
私『え』
弟『僕がしきりに話掛けても、首を傾げて「誰?」みたいな感じなんよ』
私『・・・そんなはずないと思う』
母は私を目でとらえると、また何か話し始めた。
普段なら言いたいことをしっかりと最後まで聞いてあげるのだけど・・・
私は弟の横に立ち、聞いてみた。
私『ねぇ、おかーさん。この子の名前は?』
母『・・・・・・・?』
私『・・・この子、誰だかわかる?』
母『・・・・・・・』
私『・・・・・・・』
弟『・・・・・・・』
一生懸命考えてる感じだったが、ついにわからないと答えた。
私『私の弟やで。』
母『・・・・!』
思い出したようで、母に笑みが広がった。
せん妄症のせいとは言え、
自分の事を忘れられている事実を突きつけられ、
弟のショックは大きかった(´・ω・`)
これまでに、父と弟は、面会へ毎日来るものの
長居すると母の負担になると思い早々に退室していた。
私は2人に比べ比較的長い時間居るので
(休みの日などは特に)私の顔はよく覚えているようだった。
しばらくすると、看護師さんがお薬を持って入室してきた。
看護師『あ、面会中ですね。後ほどきます^^』
私『・・・ああ、例のお薬ですか?』
看護師『はい、そうです。昨日眠れていないみたいでしたので・・・』
私『ありがとうございます。私たちはそろそろ退室しますので、お薬の投与お願いします』
看護師『お薬を入れるとすぐ眠りに落ちてしまいますが、大丈夫ですか・・・?』
私『はい、大丈夫です。面会時間過ぎていますし、他の方にも迷惑になりますので・・・』
看護師『わかりました^^お気をつけてお帰り下さいね』
母は私の手を握って離さなかったが、
私はなるべく穏やかに、母を安心させるように言葉を紡いだ。
私『おかーさん、時計見て?今、夜の10時すぎ。みんなそろそろ休む時間なので、静かにしないといけないから、私らもそろそろ病院出ないといけないんよ。おかーさんに早く良くなってほしいから、しっかり睡眠とらんと元気にならへんで。看護師さんが、おかーさんのためにゆっくり眠れるようにお薬用意してくれたよ。明日になったら、元気に治療頑張れるよ。だから、そろそろおやすみ(*'ω'*)』
母は、手のチカラを緩め。。。
小さくうなずき、手を振ってくれた。
その夜、母は覚めることなく・・・・
静かに、静かに深い眠りについたようだった。
次の日の面会時に、
ゆうべは穏やかな表情で寝ていたと看護師さんが教えてくれた。
page15へつづく。
コメント
コメント一覧 (2)
いきなりのコメント、失礼致します。
私はメソメソさまのお母様の奄美大島での幼なじみの娘です。
母から奄美の思い出と共にお母様のお話もよく聞かされておりましたので、お母様の件を知りとても驚いておりました。
そんな折、先日同じくお母様の同級生の方よりこちらのブログをお知らせ頂き、母と共に拝見致しました。
メソメソさまご自身もお忙しい中、お母様の件で肉体的にも精神的にも非常にお疲れの事かと思います。
とても他人事とは思えず…適切な言葉も見つからず申し訳ございません。
遠くからではございますが、これからも母と共にお母様のご無事を祈りながらブログを拝見させて頂ければと思っております。
長々と大変失礼致しました。
こんばんわ、はじめまして(*'ω'*)
先日、母のご友人さまより
ブログを読んでもらいたいかたが居る、とのご連絡をいただきました。
応援して下さる方が増えるのは、とても心強くもあり
同時に私自身、感謝の気持ちで満たされ、疲れや辛いことなど
吹き飛んでしまうくらい幸せな気持ちになるのです。
ご縁があって、当ブログを読み、コメントをくださり
本当にありがとうございます。
母にこのことを伝え、明日の治療の糧とさせていただきます。
梅雨が明けて、夏は始まったばかり。
まだまだ猛暑が続きますが、chiakiさまとお母様も
体調を崩されませんよう、ご自愛くださいませ。